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眠狂四郎

左下方より剣をゆっくりと円月を描きながらまわし相手を催眠状態に陥れる。敵は刃に吸い込まれるように挑んでいくが、剣がまわりきるまで生きていたものは未だかつていない・・・。

この必殺の剣法、円月殺法の使い手が、ニヒリスティックヒーロー眠狂四郎です。最近ではあまり見かけないタイプとなりましたが、戦後時代劇を代表する虚無の剣士です。

昭和31年、作家柴田錬三郎が「眠狂四郎無頼控」として週刊新潮に連載を開始すると、作品はすぐに好評となり、次々と続編が発表されていきます。昭和38年、市川雷蔵主演により「眠狂四郎殺法帳」として映画化。以後、雷蔵の演じる狂四郎作品は12作品も製作されます。

狂四郎は、棄教したオランダ人宣教師、”転びバテレン”に犯された母から生まれたという暗い生い立ちを持っており、このような複雑な出生であれば、悪い女にはとことんひどい仕打ちを与え、惚れられた女は冷たくあしらうというふるまいも納得できるような気がします。

一方、円月殺法というちょっと劇画チックな必殺剣法の使い手であるというのは、それぞれに必殺技を持って登場した仮面ライダーやウルトラマンなどと、ある意味では同じ類型のヒーローなのではないかという気もしてきます。

初めて見ると、市川雷蔵のあまりにも高飛車なセリフ回しに違和感を覚えるかもしれませんが、それは見ているうちにだんだん緩和されていきます。あの時代(昭和30年代)は、単純にキザとかニヒルという言葉で済まされていたのかもしれません。

眠狂四郎の映画シリーズは、映像やBGMが醸し出す雰囲気が独特で、事の雲行きの怪しさや不安感を余計に煽るようなものになっています。狂四郎の活躍で事件が一件落着しても、けっして痛快な幕切れとはなりません。

また、眠狂四郎を演じる市川雷蔵の内面からにじみ出るような虚無の演技は、まさにはまり役で、シリーズを重ねるたびに自らの死期も近づいていたことを重ね合わせて見ると、さらに深く感じ入るところがあります。作品の性格は一作ごとに異なり、勧善懲悪色が強い作品、猟奇的な趣向が強い作品などバラエティーに富んでいます。

眠狂四郎シリーズは市川雷蔵以外にも、鶴田浩二、松方弘樹らが演じて作品を残しています。


<登場時代劇作品>
眠狂四郎殺法帳(1963)
眠狂四郎勝負(1964)
眠狂四郎円月斬り(1964)
眠狂四郎女妖剣(1964)
眠狂四郎炎情剣(1965)
眠狂四郎魔性剣(1965)
眠狂四郎多情剣(1966)
眠狂四郎無頼剣(1966)
眠狂四郎魔性の肌(1967)
眠狂四郎女地獄(1968)
眠狂四郎人肌蜘蛛(1968)
眠狂四郎悪女狩り(1969)
(以上、市川雷蔵主演)
眠狂四郎円月殺法(1969)
眠狂四郎卍斬り(1969)
(以上、松方弘樹主演)