椿三十郎
剣の腕前と機知で、荒れた宿場町の平和をヤクザから取り戻した「用心棒」の桑畑三十郎。続編的な性格を持つ「椿三十郎」では、三船敏郎演じる浪人は、名前を問われて、庭に咲いている椿の花を見ながら「椿三十郎」
と答えます。「用心棒」では、同じく名前を問われて、窓の下に広がる桑畑を見ながら「桑畑三十郎」と答えていました。答えたあとに、「もっとも、そろそろ四十郎だが。」と付け加えるのも同じです。限りなく同一人物と言えます。
続編を嫌ったといわれる黒澤監督は、「用心棒」の次回作で三十郎を主人公にするつもりはなかったのですが、
当初書き上げた企画が地味だということで急遽予定が変更され、三十郎の連続出演となったとのこと。そのおかげで時代劇史上忘れがたいキャラクターが再登場することになりました。
ひょんなことから、悪家老の企みを阻止しようとする若侍達の加勢をすることになった三十郎ですが、映画ではそれほど前面には出てこないものの、原作である山本周五郎著「日々平安」では、藩のお家騒動に乗じて長かった浪人生活から足を洗うチャンスをけっして逃すまいとする心情が描かれています。
この、剣の達人で切れ者、正義感も人間味もあるが、山師的な雰囲気も漂わせる三十郎は、三船敏郎と黒澤監督がつくりあげた傑作アウトローヒーローです。
海外でも人気は高く、侍の典型的なイメージといえば三船敏郎演じる三十郎の名が挙げられることも多いといわれます。
(参考文献)
よみがえる巨匠の現場(シネマジャーナル)
<登場時代劇映画>
用心棒(1961)
椿三十郎(1962)